9.医師のキャリア
医師のキャリアを考えたとき、最も大切なのは「自分は医師としてどうありたいか」という目標を具体的に考えることです。専門医を目指すのか、地域医療に貢献できるような医師を目指すのか、開業を目指すのか、博士号を取得したいのか。医師によって考え方も違えば、医師になった理由、目的も様々ですが、自分の将来のキャリアを描き、目標を見定める事が、今後医師としてやっていく上でプラスになるという事は、全ての医師に共通しています。
専門医を目指すのであれば、所定の研修の受講や臨床経験年数、認定試験などそれぞれの学会が定める基準をクリアしなければなりません。もし専門医取得のために転職を考えているならば、専門医の取得をバックアップしてくれる病院選びが重要になります。ただし、専門医として認定されるだけで、その医師のキャリアが完結する訳ではありません。本当に良い専門医を目指すためには、さまざまな臨床経験を積んでいくことが大切です。昨今では総合内科専門医など、ひとつの臓器だけではなく、多臓器の疾病を総合的に判断できる専門医も求められています。また、開業を考えている医師にとっても専門医として認定されることは大きな武器となります。
博士号の取得を目指す、または自分の臨床技術を更に磨きたい医師にとっては、海外留学する事も選択肢の一つです。
海外留学には、大きく分けて研究留学と臨床留学の2種類があります。研究留学は医局などからの紹介で半年間程度の短期留学が一般的です。期間は短いですが自ら積極的に動く事で得られるものは多いでしょう。例えばアメリカでは企業と共同で膨大な研究費を使い、様々な最新の研究が行われています。それを目の当たりにすることは医療の今後を考えていく上でも有用なことでしょうし、また日常の業務に縛られず医学について学習する環境としては最適といえます。
海外で自分の臨床技術を磨きたいという人は臨床留学することとなります。そのためには現地の医師免許取得が必要です。また、日々の忙しい業務に加え、海外の医師免許取得を目指す勉強をするのは並大抵のことではありません。医学部卒業前から臨床留学を目指して勉強するのが一番良い手段ですが、なかには常勤での勤務から一旦離れ、非常勤やアルバイトで生計を立てながら勉強している医師もいます。将来の臨床留学を考えているならば、早めの準備が肝要です。
初期臨床制度の導入により、医師は、医局人事に縛らず、自由にキャリアを築いていける時代に突入しました。裏を返せば、病院や患者に医師が選ばれる時代が来たといえるでしょう。自分が理想とする医師の姿をしっかりと見据えた上で、一歩一歩キャリアを築いていく事が、医師として満足いく人生を歩んでいく第一歩と言えるでしょう。